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『レイジングループ』レビュー 人狼×ホラー×伝記 KEMCOの傑作ADVゲーム(ネタバレ無し)

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未知への恐怖と好奇

 

わからないものは怖い
知らないものは恐ろしい


これらは人間の根底にある価値観である。


真っ暗闇の中で歩くのは、
なにが起るか分からないから怖いのだ。

 

幽霊が出てくるかもしれない

人の身体を持った狼の化け物が出てくるかもしれない

何が起こるか予想出来ないから恐怖を感じる。


同時に人間は分からないものを理解したい、
知らないものを知りたいという欲求も抱えている。

 

未知のものだらけの宇宙や深海にロマンを感じたり、

凄惨な事件がなぜ起きたのか真相を知りたいというのも未知への好奇と言える。

 

今回紹介するレイジングループはまさに"未知"の塊のようなゲームである。

 

分からないから怖い、知らないから恐ろしい。
分からないからこそ先が気になる。知れば知るほど真相を知りたくなる。


レイジングループはジャンルとしては間違いなく「ホラーゲーム」だが、
プレイした後に怖くなって夜に眠れなくなるなんてことはほとんど無いだろうから安心してほしい。
それより先が気になってやめられなくなって夜に眠れなくなる心配をした方がいい。
(筆者は2日間徹夜するハメになった)

レイジングループとはどんなゲームか

主人公の房石 陽明(ふさいし はるあき)がバイク旅行中に田舎の山道で迷って、すったもんだの挙げ句、カルト集落に辿りつき、人狼ゲームに巻き込まれ、
集落の中に潜む人狼とはいったい何者なのか、そして人狼ゲームの裏にあるものは何なのかを突き止めていく物語である。

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事件を追っていく中で房石陽明は何度も死ぬことになる。
しかし、死んだ次の瞬間には最初のシーンに戻っている・・・。

謎のループ現象にも巻き込まれてしまう

死んだ時の記憶を頼りにして人狼ゲームを攻略し、謎を探っていくことになる。

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▲ただしループで持ち越せる記憶は曖昧

人狼ゲームとは?

村人の中に一晩に一人村人を殺してしまう人狼が紛れ込んでいるので、全員の投票によって一日に一人だけ怪しい人を処刑して紛れ込んでいる人狼を駆逐するゲーム

レイジングループでは"黄泉忌みの宴"という名前で行われている。

 房石陽明というサイコパス

主人公の房石陽明は、表面上は誰とでも朗らかに話し、TPOに応じた対応も取れる好青年。
おまけにコミュ力も高く、女性経験も豊富で非の打ちどころのない主人公である。

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しかし、普通の人とは明らかに違う異質な道徳観念を持っているため、プレイしているうちに「あ、こいつサイコパス」と思ってしまうこと請け合い。(感情移入はしにくいだろう)

善人か悪人かで言うと悪人寄りの人間といえる。

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▲これには周りの人もドン引き

彼の異常性で特筆しているのは、未知に対するスタンスが常人と大きく違うところである。

普通の人間が未知(怖いもの)に遭遇した時は恐怖によって思考停止に陥るか、その場から逃げ出そうとするものだが、

彼は知らないことを知ることで恐怖を克服したいという欲望が強すぎるあまり、自分から未知へ積極的に飛び込んでいく。

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▲はっきり身の危険を感じる状況でもその悪癖が発揮される。

自分からどんどん謎(未知)に近付いていってくれる。

未知を探求するゲームにおいてこれ以上頼りになる主人公は他に居ないだろう。

 

そしてこの主人公、頭もキレる上に、とにかく口が達者なのだ。

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▲プレイヤーが思いつくようなことはやってくれる

プレイヤーは冷めることなく、安心してこのサイコパスの行末を見守ることが出来るのだ。

人狼村での凄惨な数日間をループし続けても発狂することなく真実を突き止めることが出来る唯一の主人公なのである

人気投票一位は伊達じゃない。

魅力的な住民たち

 最初にカルト集落と言ってしまったので、ヤバい人たちが住んでいるのでは?と想像してしまったかもしれないが、基本的に集落の住民たちは善良な人たちであり、それぞれ一人一人が大きな魅力を持っている。

最後までプレイすると、みんな愛おしいと感じるはずだ。 
全員紹介したいところだが、そうするとかなりのボリュームになってしまうので、ここでは住民たちの一部を紹介しておこう。

・・・と言っても魅力を解説しようとするとどうしてもネタバレになるので、簡単なコメントくらいになってしまうが。

 

 

芹沢 千枝実(せりざわ ちえみ)

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就活から逃げて帰省してきた大学生。
バイクで事故って途方に暮れていた房石陽明を一晩泊めてあげる優しい(?)女の子。
プレイしているうちに分かると思うが、わりとめんどくさい子でもある。

千枝実ちゃんのキマってる表情は必見。初見は誰もがビビるはず。

回松 李花子(うえまつ りかこ)

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神秘的な雰囲気を持つ年齢不詳の女性
・・・と思いきやドジっ子属性持ちだったりする。

最初はよくわからない人という印象を持つことになると思うが、知れば知るほど好きになっていくキャラだと言っておこう。

 

巻島 春(まきしま はる)

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独特なファッションセンスを持つ女子高生。
最初は主人公にまで「ヒステリー系ヒロインは人気が出ないぞ」と言われてしまうほどだが、あるルートをクリアした後はみんな春ちゃんが大好きになるはず。

 

狼じじい

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昔から村に居るらしい謎の老人
ボケていると他の住人から思われている

 

黄泉忌みの宴(人狼ゲーム)というコミュニケーションゲーム

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このゲームの中で人狼ゲームにあたるのは黄泉忌みの宴という儀式である。

昼の間に住民全員で誰が狼なのか話し合って、多数決で投票して一人をくくる(処刑する)

 

ただの村人や狼の他に、へび(占い師)、さる(恋人)、からす(霊媒師)、くも(狩人)といった特別な能力を持つ加護(役職)持ちの人が居る。

(カッコ内の言葉は本家人狼ゲームの言葉に置き換えたもの)

 

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へびは毎晩一人を選んで村人か人狼かを見分けることが出来る。
さるは二人居て、もう一人のさるが誰なのかが分かる。
からすはくくった人が村人か狼かを見分けることが出来る。
くもは一晩に一人だけ狼の襲撃から守ることが出来る。


村人たちは授かった加護を生かして、村人の中に潜む人狼を探し出すわけだ。


我々が普段遊んでいるような人狼ゲームと違うのは、
集落内の人間関係がダイレクトに反映されること。(嫌われている人に投票が集まりやすい)
そして、本物の生死がかかっていることである。
遊びではないので、当然アクシデントも起こる。(宴の外で殺人が起きたり

 

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▲元々の仲がが悪いと・・・

主人公と一緒に住民の中の誰が人狼なのか、誰が役職持ちなのかを考えるのも面白い。

 

何故こんな現代では考えられないような風習が未だに残っているのか

どうして村の住人たちは自然とこの状況を受け入れてしまうのか

狼になった人間はどうしてこれまでずっと一緒に暮らしてきた村の仲間を殺せるのか

それら多くの謎はゲームの中で解き明かしていくことになる。

 

ゲームをプレイすると全ての謎の真相は分かるはずだ。

一部わかりづらいところがあることにはあるが、ケムコADVポータルレイジングループ完全読本などで分かりやすく解説されているので、どうしても気になるようならそちらを見てみることをオススメする。

また後で紹介するが小説版レイジングループはそのへんの分かりづらいところが分かりやすくなっていたりするので、レイジングループを120%理解したい!と思ったら小説版を手に取るのがオススメだ。

 

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 シンプルだがストレスフリーなUIと親切なバッドエンド解説

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▲見返すのも楽チン

シナリオはチャート式になっており、好きな場面にいつでもジャンプ出来る。
つまり選択肢ごとに毎回セーブして・・・とやる必要がない。

クリアするまでに自然と全てのバッドエンドを見ることになるが、
バッドエンドの後で何が原因だったか、どうすれば進められるのかを丁寧に解説してくれるので、途中で詰むことがなく、スムーズにクリアまで到達出来るだろう。

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▲解説の謎のひつじさん。タ○ガー道場よりわかりやすい。

味のある声優陣

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▲最初の台詞と終盤の台詞を聴き比べてみてほしい

声優は全員ドワンゴクリエイティブスクールに所属している方たちなので、下手だと感じる方も中には居るかもしれない。
特に房石陽明は喋り方が独特(棒読みと言われたりする)だが、彼のことを知っていくと、その喋り方がしっくりくるに違いない。
最後の方のシーンになるとみんな上達しているのがはっきり分かるのも面白い。

もしアニメ化されることになって声優が変わる、なんてことになったら泣いてしまう。

 

1つ目のルートをまるまる遊べる体験版

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▲体験版だけでも結構なボリュームがある

ゲーム全体のボリュームの1/3近くを遊べてしまう体験版が無料でプレイ出来るので、少しでも気になったらまずは体験版をやってみよう

黄泉忌みの宴が始まるまでの最初の数分は退屈に感じるかもしれないが、
宴が始まってからは一気に面白くなっていくはずだ。

色んなハードで遊べるぞ

ダウンロード版

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▲Switch版は特に遊びやすい

iOS / Android / PS4 / Vita / Switch / PC(Steam)

 

パッケージ版

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▲中身はDL版と変わらないがジャケットが描き下ろしになっている

パッケージはPS4のみ

 

ハードを持ってないから遊べない・・・なんてことはまずないだろう。


一番安く遊べるのはiOSAndroidだが、PS4やSwitchを持っているならそちらがオススメ。

iOSAndroid以外のハードは少々高い代わりにパートボイスからフルボイスになり、おまけのエンディングが2つ追加されたり、スチル追加やシナリオが加筆されており完全版のような仕様になっている。

 

遊べるハードがない?それなら小説版をどうぞ全7巻でゲーム以上に濃密。

遊べるハードを持ってても小説版はかなり良く出来てるのでオススメしたい。

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▲特に最終巻はゲームを既にやっていても必見の内容だ

また小説版には、

奈須きのこ(月姫Fate/GrandOrder など)

虚淵玄(まどマギ沙耶の唄 など)

小高和剛(ダンガンロンパ など)

日向夏(薬屋のひとりごと)

イシイジロウ(428 ~封鎖された渋谷で~ など)

芝村裕史(高機動幻想ガンパレード・マーチ刀剣乱舞 など)

竜騎士07(ひぐらしのなく頃にうみねこのなく頃に など)

著名クリエイターが一巻につき一人ずつ巻末に解説文を寄せている。(それぞれ独自の視点からの解説をされていてどれも面白い)

 

アドベンチャーゲームに抵抗が無いなら絶対にやるべき一本


本編クリアまでのプレイ時間はだいたい10~20時間くらい(ボイスを飛ばさずにきちんと聞くかどうかで変わる)

クリア後のおまけなどを含めるとだいたい20~30時間といったところ。

 

クリア後のおまけもかなり充実していて、

エクストラシナリオが5本(本編の後日談のようなもので、それぞれ主人公やテイストが違う)

二週目以降は『暴露モード』が解禁されて、主人公以外のキャラクターが考えていたことや人狼勢力の動向なども分かるので、二週目もかなりガッツリ楽しめる。

 

なにはともあれまずは体験版をプレイしてみてほしい。

 

いや、ほんとにマジで面白いから体験版だけでもいいからまずやってみてほしい

 

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参考文献 : 

編集人:青野和久、発行人:松下大介(2018)『レイジングループ完全読本』株式会社ホビージャパン

 

書いた人:つんぽこまる